通関士や通関士を目指す人はよくご存知だと思うけれど、この通関士と言う資格は、通関業者の中にいて初めて名乗ることができます。
だから昔から「通関士って将来独立出来ないからな〜」と言います。
確かにその通りですが、これからは通関士に求められることが大きく変化していくと私は考えています。
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通関士試験合格者と通関士の違い
冒頭で書いたことを少しだけ補足。
通関士試験に合格した人は、在籍する通関業者を通じて税関に「確認」を受ける必要があります。
要するに、前科がないとか破産者じゃないとかそういう通関士としての条件をクリアしていることを税関に確認してもらうのです。
この確認を受けて初めて通関士を名乗ることができる為、自分で通関業者を立ち上げでもしない限り独立できない資格なのです。
通関士をなのりつつ、フリーランスという働き方は今はできないのです。
通関を取り巻く変化
私がこの業界にいて一番感じる変化は経済連携協定、通称EPAです。
協定を結んだ国同士が関税を安くしたり、無税にしたりします。
日本もこの協定の締結相手が次々に増えてきました。
アジア全域の国々との協定、EUとの協定、そしてTPP。
少々乱暴な言い方ですが、TPPは太平洋の周り一帯の国々で一気に関税をフリーにしてしまおうと言う構想ですね。
米中の貿易戦争の事はちょっと置いておいて、これらの協定は全て関税のなくしていこうと言う方向ですね。
原産地認定のことを少しだけ
協定を結んだ国からきた品物は全部関税が安くなるのかと言うとそうではありません。
その国の生産品に対して関税が安くなります。
そして一定の条件のもとで輸送された場合に適用されます。
では何をもってその国の生産品とするか?
これの認定が非常にややこしいのです。
そもそも輸出国の公的な機関が発行した証明書をもってその国の生産品とするのが普通でした。
この証明書を税関に提出すると、安い税率を適用させてもらえるという比較的単純な仕組み。
ところが
その後、輸出者が作る証明書が出現し、今では輸入者が作るものもあります。
税金を安くするための証明書を、当人同士が書くなんて昔なら考えられませんよね。
そんな事したら好き放題出来ちゃうじゃんと。
本来は簡単にすることが目的のはず
そもそもこの様な制度の移り変わりは、輸出入者を信頼して手続きを簡単にし、シームレスな物流を実現する為に作られた制度だと思います。
そして、手続きを簡単にするが、違反したら厳罰にすると言うのが現代のトレンドですよね。
ところが
実際は逆で、どんどん複雑化しています。
非常に役所の壁が高く厚いのです。
とは言え、この現象はある程度のスパンで徐々に本来の目的の姿になるでしょう。
まさに通関士の仕事と言うのは、このような変化の中で、荷主が制度の恩恵を受けられるように手助けをする役割が多くなっていくのではないかと思います。
今後なくなる仕事の多くは「士業」
この、経済連携協定のことはほんの一例で、いろいろな制度が変化しています。
一方AIを始めとするテクノロジーも目まぐるしく進化しています。
士業といわれる職種が消えていくと言われて久しいですが、通関士も例外ではありません。
今の様に次から次へと通関書類を作って行くような事はAIの力を借りていく事になるでしょう。
そうならなければ、日本は世界からどんどん立ち遅れてしまう事になります。
ただ、貿易や通関に関するスペシャリストが必要なことも確かです。
これからの通関士
私が思うこれからの通関士は、コミュニケーション能力が問われると思います。
知識を持っているだけではダメでしょう。
必要としている人にわかりやすい言葉でアドバイスすることが求められるでしょう。
「今よりも更に」です。
誰にでもわかる様な易しい言葉で「伝えるスキル」が必要です。
ここまで書いて、記事を読み返して見ると「自分もまだまだだなぁ」と反省するばかり。
専門知識×伝える力
いや、これは通関士だけの話ではないですね。
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